【おねんね2】
という事で、睡眠不足はどこまで学習に支障を及ぼすのかを、もう少しまとめたいと思います。
HavekesとAbelのレビュー(Havekes & Abel, 2017)によると、睡眠不足は、cAMP(環状アデノシン一リン酸)およびmTOR(哺乳類ラパマイシン標的)のシグナル伝達に障害を起こすと言われております。
で、cAMPとmTORは【記憶形成や学習能力に関わる神経物質】っていう理解で、全然大丈夫です(しかも、これらは海馬に与える分子レベルの話なので)。
簡単にまとめれば、
「睡眠不足は海馬におけるcAMPおよびmTORシグナル伝達を妨害し、記憶障害の原因となる可能性があるよ。」ということです。
他にもこのレビューでは、
・睡眠不足は海馬における神経新生を減少させ、記憶を保存するために利用できるニューロンの数を減少させる可能性がある。
・睡眠不足は海馬における炎症を増加させ、ニューロンを損傷し、記憶機能を損なう可能性がある。
ことを述べています。
で、記憶は勉強系以外にも影響があって、例えば学習後の睡眠不足が運動野の脊椎喪失につながること(Yang et al., 2014)が研究で明らかになっていて、これはダンス、楽器とかの、新しい運動を覚えたり、既存の運動を改善したりする能力を低下させる可能性があるんですよ。
睡眠不足は、記憶に関して重要な海馬を大きく傷つけることになるので、勉強で覚えが遅くなったり、年齢を重ねたときには、アルツハイマーの発症リスクも上げてしまいます。
解決方法はやっぱり睡眠の改善に限るので(食事と運動もだけど)、とにかく質を上げたりする方法を解説していこうと思います。
それでは~。
参考文献
Havekes, R., & Abel, T. (2017). The tired hippocampus: the molecular impact of sleep deprivation on hippocampal function. Curr Opin Neurobiol, 44, 13-19. https://doi.org/10.1016/j.conb.2017.02.005
Yang, G., Lai, C. S., Cichon, J., Ma, L., Li, W., & Gan, W. B. (2014). Sleep promotes branch-specific formation of dendritic spines after learning. Science, 344(6188), 1173-1178. https://doi.org/10.1126/science.1249098