WAIS特集 #3|解釈編
— FSIQ・指標・GAI/CPI・ベースレート・信頼区間・RCI・“支援への翻訳”のすべて
WAISの解釈は代表値(FSIQ)→機能別プロファイル(VCI/VSI/PRI/WMI/PSI)→行動と支援へ段階的に“翻訳”する作業である。散らばり(index間差)が大きい場合はFSIQ単独を避け、GAI(核能力)/CPI(作業効率)を併読し、ベースレート・信頼区間で“珍しさ”と“誤差”を吟味する。縦断評価では練習効果を考慮しRCI(信頼できる変化指標)で変化を検定する。結論は面接・観察・適応行動・他資料と統合し、具体的な支援案に落とし込む。
解釈のゴールは“当てもの”ではなく、支援の設計です。
FSIQは「代表値の候補」
指標(VCI/VSI/PRI/WMI/PSI)は「作業プロフィール」
GAI/CPIは「核の思考力」と「作業の手際」を分離して眺める補助線
ベースレート/信頼区間/RCIは“偶然・誤差・練習効果”を見切るナイフ
この順で読み解けば、数値→行動提案へ自然に橋が架かります。
FSIQは同年代集団に対する相対位置の総合指標。ただし指標間の散らばりが大きいと1つの顔(FSIQ)では表しきれないため、後述の手順で適切な代表値の選び直しを検討。
VCI=ことばの理解・概念化(主にGc)
VSI/PRI=視空間・非言語推理(Gv/Gf)
WMI=保持しながら処理(Gwm)
PSI=視覚探索・照合・書記の速さ(Gs)
CHC理論との対応を意識しつつ、“どの作業机が広い/狭いか”を把握します。
プロファイルを授業・職務・生活に翻訳。例:WMI/PSIが低い→手順の細分化/外部メモリ/時間的余裕、VSIが強い→図解・動画で導入など。
Step 0|妥当性の確認
受検環境(疲労・睡眠・服薬・視力/運動)・協力度・言語環境(母語)を点検。努力妥当性や倫理・説明はガイドラインに準拠。
Step 1|FSIQは“代表値”として妥当か?
indexの散らばりが大なら、FSIQ単独を採用しない。この“散らばり”は統計的有意だけでなくベースレート(どれくらい珍しいパターンか)で吟味。
Step 2|Indexの読み分け
VCI/VSI/PRI/WMI/PSIの相対関係とCHC対応を確認。
感覚運動・視力・書字などPSIに影響する非認知要因の記載を忘れない。
Step 3|GAIとCPIで“二枚看板”
GAI(VCI+VSI/PRI):WMI/PSIが相対的に低いとFSIQが「過小化」されやすい。GAIを核能力の代表値としてFSIQと併記し、解釈の軸を整える。
CPI(WMI+PSI):作業効率のまとめ指標。GAI↔CPIのギャップは、「考える力」vs「回す手際」の差として配慮設計に直結する。WAIS-IVでも任意指標として位置づく。
Step 4|“珍しさ”を見る:ベースレート
index間差/下位検査間散らばりが人々の中でどの程度まれかをベースレート表で確認。珍しいほど臨床的意味を持ちやすいが、1点主義は禁物。
Step 5|“誤差”を見る:信頼区間
各指数のSEMから信頼区間を設定し、「点差」が偶然か実質差かを判定。報告文には区間幅を明記して言い過ぎを避ける。
Step 6|“変化”を検定:RCI(信頼できる変化指標)
縦断(再検)では練習効果が不可避。RCIや回帰ベース法で、真の変化か**再検上昇(Practice)**かを区別。臨床神経心理の標準的手引にも明記あり。
Step 7|“翻訳”:生活・職務への設計
Vineland等の適応行動、学校・職場情報と統合し、スケジュール・UI・手順・評価軸の変更案に落とす。
GAIはFSIQの代替ではないが、FSIQと並べて読む:WMI/PSI由来の低下でFSIQが抑え込まれているとき、GAI=核能力の代表値として患者・学校・職場への説明が明瞭になる。公式マニュアルも“FSIQとともに報告・解釈”を推奨。
CPIは“作業の手際”総量:WMI+PSIを1値で要約し、GAIとの差が配慮レベルの根拠になる(例:時間延長/手順分割/自動化)。概念整理はWeissら(WISC-IV技術報告)とWechsler系の資料がベース、日本では補助マニュアル(2025/7/22)でCPIが整理されている。
ベースレート:同年齢の標本でその散らばりがどれほど頻繁か。珍しいパターンほど臨床的含意が強いが、症状・環境と整合するかを点検。Pearsonの標準レポートにはIntersubtest ScatterのBase Rateが出力される。
信頼区間(CI):SEM由来の不確かさ。点差≠必ずしも実質差。CIが重なるときは断言しない。
練習効果:WAIS-IVでは再検で有意に上昇しうる。再検計画(間隔・交互フォームの有無)とRCIで真の変化を見分ける。回帰ベースの方法が単純差より精度が高いと報告。
RCI(Reliable Change Index):変化量/差の標準誤差で規格化し変化の有意性を判定(95%なら**|RCI|≥1.96目安)。臨床的有意性(機能的境界の横断)と統計的有意性**は別物、二段で評価。
臨床神経心理の総説も「再検=練習効果を前提にRCI/標準化回帰を活用すべし」と明記。
VCI強み × WMI/PSI弱み
情報提示:口頭+要約カード/ピクト図。
設計:長タスク→短いステップ、締切に余裕、チェックリスト常備。
評価:速さより正確さ、作業密度を下げて思考時間を確保。
VSI/PRI強み × VCI相対弱み
情報提示:図解・動画・実演先行→言語は振り返りで整える。
文書:ワークフローマップ/画面遷移図で合意を先に取る。
WMI弱み
補助手段:外部メモリ(付箋/タスクツール)、二重確認、手順分割。
PSI弱み
環境:UI簡素化/テンプレ化/入力自動化、混雑時の作業回避、時間延長。
併用:Vineland等で生活・社会的自立を評価し、学校/職場と共有可能な表現に翻訳。
A)一般向け(本人・家族)
「あなたは言葉で考える力(VCI)が強く、作業を速く回す力(PSI)がやや苦手でした。
そこで、手順を短く区切る/確認リストを使う/時間に余裕をもつことで、強みを活かしながら苦手を補えます。数値は状況次第で揺れますから、今後2〜4週間の調整で様子を見て、必要なら再評価を考えましょう。」
B)専門職向け(教員・上司・産業医・多職種)
「GAI>FSIQ(WMI/PSI相対低位)で核能力>作業効率のプロファイル。
タスク設計は短ステップ化/WBS化、締切バッファ20〜30%、UI簡素化。
評価は正確さ優先、二人チェックでエラー低減。2–3か月でKPI(エラー率・処理時間)を再計測し、RCI/回帰ベースで“真の変化”を判定します。」
(倫理・同意・役割分担はAPA等のガイドラインに準拠)
ケースC:30代・バックオフィス
主訴:期限が重なるとミス。文書の要点把握が遅い。
結果:VCI=平均上/VSI=平均/WMI=平均下/PSI=平均下、FSIQ=平均。GAI>FSIQ。
解釈:核能力は保たれるが作業効率の低さがボトルネック。インターサブテスト散らばりはベースレート30%台で“よくある揺らぎ”の範囲、臨床意味はプロファイル全体で判断
翻訳:①手順分割とチェックリスト、②定型入力のテンプレ化、③締切前倒しレビュー(24–48h)、④文書は要点→図→本文の順で処理。
追跡:8週後にRCIで再検。PSI関連の実務KPI(処理時間/件、エラー率)が統計・臨床の両面で改善。
「FSIQがすべて」
→ 散らばりが大のときはGAIを併記し、プロファイル中心に。
差の過大解釈
→ 信頼区間とベースレートで“偶然/珍しさ”を二段で判定。
PSI低位=能力低いと短絡
→ 視力・手指・紙面・UIなど非認知要因を必ずメモ。
縦断で練習効果を無視
→ RCI/回帰ベースで補正し、間隔設定も計画的に。
セキュリティ軽視
→ 具体項目の公開禁止。実施・採点・解釈は訓練者のみ。
倫理・同意の軽視
→ APA等のガイドラインに従い、目的・限界・返却方法を明示。
日本:現行標準はWAIS-IV。補助マニュアル(2025/7/22)が公表され、CPI紹介/短縮版/判定閾の更新など運用知見が拡充。
海外:WAIS-5(2024)でFSIQ=7下位約45分/指標=10下位約60分へ効率化。理論整合(CHC)も強化。国内導入は公式発表待ち。
FSIQは“候補”、Indexは“作業プロフィール”、GAI/CPIは核能力と作業効率の分解。
ベースレート×信頼区間で“珍しさ”と“確からしさ”を、RCIで“真の変化”を押さえる。
面接・観察・適応行動との統合を経て、具体的支援に翻訳する。
日本はWAIS-IVの運用知見が更新中、海外はWAIS-5で効率化。一次資料を定期確認。
臨床・教育・産業・司法での使い方を丸ごと扱います。
発達障害/知的障害/高次脳機能障害/気分・不安での解釈と配慮設計
学校:特別支援×学力評価への橋渡し
産業保健:職務設計・KPI・評価軸の見直し
司法:妥当性・証拠性・限界
を、ケースとテンプレで“現場に刺さる”かたちに落とし込みます。
本記事はAI(ChatGPT)が執筆支援しています。正確性・網羅性は保証されません。心理検査は有資格者・訓練者が、公式マニュアル/技術資料/倫理指針に沿って実施・解釈してください。本稿は教育目的の概説です。
Pearson. (2024). Wechsler Adult Intelligence Scale, Fifth Edition (WAIS-5)(年齢範囲・FSIQ7下位≈45分・指標10下位≈60分). (ピアソン・アセスメント)
Pearson. (2021). WAIS-IV Technical & Interpretive Manual (Revision)(GAIはFSIQの代替でなく併読、解釈上の留意点・付録). (pearsonclinical.com.au)
Pearson. (2019–2024). WAIS-IV Sample/Score Reports(Intersubtest Scatterのベースレート・SEM表示の例). (pearsonclinical.co.uk, ピアソン・アセスメント)
Weiss, L. G., & Gabel, A. D. (2008). WISC-IV Technical Report #6: Using the Cognitive Proficiency Index in Psychoeducational Assessment(CPI概念の整理;WAIS-IVにも適用可の任意指数として導入)。 (ピアソン・アセスメント)
Zhu, J., et al. (2007). Wechsler GAI Symposium (APA)(GAI/CPIの位置づけ概説). (ピアソン・アセスメント)
日本文化科学社. (2025, Jul 22). WAIS-IV補助マニュアル(CPI紹介・短縮版・新たな判定値). (日本文化科学社)
松田 修. (2023). 日本版WAIS-IV—高齢者に対する使用をめぐって—. 老年臨床心理学研究, 4, 36–46.(日本語による運用論点の総説). (J-STAGE)
Estevis, E., et al. (2012). Effects of practice on the WAIS-IV across 3- and 6-month intervals. The Clinical Neuropsychologist.(練習効果と回帰ベースRCIの有用性)。 (PubMed, Taylor & Francis Online)
Duff, K. (2012). Evidence-based indicators of neuropsychological change(RCI/標準回帰など縦断評価の総説). (PMC)
APA. (2018). Guidelines for Psychological Assessment and Evaluation(倫理・同意・返却の原則). (アメリカ心理学協会)
2025年8月17日